旅の記録

旅が好きです。

深夜特急に憧れて

三ヶ月前、大学の書店でふと目に入った本があった。その本の、人を旅に駆り立てるような題と、心を揺れ動かすような躍動感と、どこか寂しさが垣間見える表紙に惹かれた。僕はその本にすぐに手を伸ばした。それが沢木耕太郎の『深夜特急』だ。

 

深夜特急沢木耕太郎が26歳の時に旅した、香港からタイ、シンガポール、マレーシアを経てシルクロードを通りユーラシア大陸を横断、最終目的地をロンドンに設定した旅を本人が全六巻のノンフィクションの紀行文として著作したものである。

 

深夜特急の旅は、大学に入学したばかりの18歳の僕にとって憧れとなった。アジアの国々で、僕らにとっては水準の低いと思われるような生活を送る子供達。それに対して欧米や日本などの生活水準の高い豊かな国々から、バックパックを背負い旅する若者たち。一体何を求めて、何のために旅をするのか。それを表現することは簡単なことではないだろう。ドミトリーで空虚な目で天井を見つめて微動だにしない若者。もはや帰るつもりもあてもなく、麻薬のみが人生の楽しみとなっているバックパッカーたち。彼らは旅から何を得たかったのだろうか。そして深夜特急の時代から何十年も経った今、一体何をして過ごしているのだろうか。

 

僕は旅に行く事を決心した。といっても深夜特急のような1年以上に及ぶ長大な旅ではない。その10分の1もない、たった一ヶ月の東南アジアへのバックパッキングである。人生は基本的には空虚なものかもしれない。しかし旅をすることで、人生に何かを見いだしたい。「旅には適齢期がある」と沢木耕太郎は言う。10代でしか出来ない旅を、僕はこの大学一年の夏休みで経験したい。